AIとぱっけーじん・中編――AIを活用したら、どんな変化が起こるの?
毎回、パッケージデザインにかかわる「ぱっけーじん」にご登場いただき、さまざまなテーマについて語っていただく特集企画。第1回は、「AIとぱっけーじん」と題して、株式会社プラグの小川亮さんに登場いただきました。中編では、小川さんのパッケージデザインに対する「思い」や、小川さん自身が感じている「AI活用による変化」についてお聞きします!
デザイナーとマーケターのバイリンガル。大学で研究を続け、「よりよいデザイン」を追究!
――ところで、小川さんはなぜパッケージデザインに携わるようになったのですか。
私の父はグラフィックデザイナーで、祖父は画家。子どもの頃から父の事務所に遊びに行っていたこともあり、デザインを身近に感じていました。大学を卒業後、キッコーマンでマーケティングの仕事に携わり、退社後に父の仕事を手伝うようになったのですが、この時の経験が私のキャリアに大きな影響を与えました。
耳が不自由な父の通訳としてクライアントとの打ち合わせに同席し、毎回、ノート一冊分のメモを取るうちに「デザイナーの言葉」が理解できるようになってきました。キッコーマン時代に身につけた「マーケターの言葉」と、父の会社で身につけた「デザイナーの言葉」。2つの言葉を理解したバイリンガルであることが、私の強みだと思いました。それで、父の会社を継いだ後、デザインとマーケティング・リサーチの2つのサービスを提供するようになりました。
――バイリンガル! なんだかかっこいいですね。小川さんのような働き方は珍しいのでしょうか。
「ぱっけーじん」としては、珍しいかもしれないですね。実はもう一つ仕事の軸があって、それは「研究」なんです。キッコーマンを退職後、ビジネススクールに通い、マーケティングの研究でMBA(経営学修士)を取得しました。現在は、大学でマーケティングを教えています。
私はずっと「よいデザインとは何か」を考えていて、この答えを追究するために研究を続けています。近年のテーマは「AIで生成したデザインは、とれだけ創造的か」。マーケティングの手法を用いてデータを集め、分析した結果を学会で発表。研究には「何が正しいのか」を突き詰めていくおもしろさがありますね。
パッケージデザインAIをリリースして4年。すでに大きな変化が起きつつある!?
――小川さんが子どもの頃から経験してきたこと、学び取ってきたことすべてが、現在の「ぱっけーじん」としての仕事に生かされているのですね。
ありがとうございます。今後は、「パッケージデザインにAIを活用する」という経験が、私たち「ぱっけーじん」に新たな変化や成長をもたらしてくれるかもしれません。
実際、私自身、すでにたくさんの変化を感じています。たとえばコミュニケーション。クライアントがデザイナーにデザインを依頼するとき、これまでは「言葉」で伝えてきました。でも、デザインを言葉で伝えるのって、意外と高度なスキルが必要ですよね。そもそも、デザインを作るのに、なぜ言葉で伝えなければならないのでしょうか。
コップ1つとっても、どのくらいの高さからがコップで、どのくらいの高さまでがお皿なのか。これを言葉で説明するのは大変です。生成AIなら、このようなイメージをデザインにすることができます。つまり、言葉ではなく、デザインでコミュニケーションを図れるようになります。
――なるほど。ほかに小川さんが感じている「変化」はありますか。
パッケージデザイン以外にも、商品のキービジュアルやネーミングなど、「こんな商品をつくりたい」というイメージをAIが生成できるようになるかもしれません。AIが生成したイメージを見ながら、商品開発に携わる人たちが意見を交わして、よりよい商品にしていく。そんな時代が来るのも、そう遠くない未来かもしれません。
――なんだか、すごい変化が起きそうですね。そうなるとパッケージデザイナーの果たす役割も変わってくるのではないでしょうか。
確かに、生成AIで頭の中にあるイメージを「絵」で表現できるようになると、デザイナーの役割や定義そのものが変わってくるかもしれません。そうやって考えると、AI活用による一番の変化は……。
――ここでストップ! 今回はここまでにして、後編で詳しくお聞きしたいと思います。果たして、AIの活用が進むことで、パッケージデザイナーの役割はどのように変わっていくのでしょうか。後編では、小川さんに「AIとぱっけーじんの未来」について、大胆予測していただきます!